日々雑録

40歳、書籍編集者の日記です。

子ども、1人か2人かもっとか

子どもがいると、他人から「もう1人はいつ?」「一人っ子はさみしいよ」などと言われることがある。私が最初に言われたのは、出産の半年後。そのとき作っていた本の撮影時に3人の子持ちカメラマン(男性)から「次はいつ? 早いほうがいいよ」と言われた。別に腹は立たなかったけど、あまりに早すぎてびっくりしたし、私と夫の人生に大きくかかわることなのに(言った人には何の関係もないのに)、勝手に次があると決められたことに驚いて「産むかわからないし、まだ考えられない」と答えた。

わりと年をとっているせいか、またはしっかりしているように見えるせいか(別にしっかりはしていない)、あるいは気が強そうなせいか(確かに気は強い)、私は他人に余計なアドバイスをされないほうだけど、それでも10回は言われている。

私と夫は、最初から話し合って「たぶん子どもは1人」と決めていた。その理由のひとつは、夫が仕事に集中したいから。夫は仕事でやり遂げたいことがあり、性格的に子どもが複数いたら子育てや家事も精一杯しようとして、追いつめられるからだ。人生の目的も性格も、それぞれ。もうひとつは、私は子どもが大好きだけど仕事も好きで家事は大嫌いだし、私の能力では2人、3人の子どもを適切に育てながら働くのは難しいと思ったから。もちろん、妊娠・出産・夜泣き対応・離乳食づくりを再びするのが嫌だとか、身軽に旅行したいとか、保育園に入れなかったら困るとか、私や夫の親に子育てを手伝ってもらうのは避けたいとか、ほかにも細々とした理由がある。

子どもが0~2歳のころは毎日とても疲れていて、「かわいい」と「大変」だけで頭がいっぱいだったから、次の子どものことなんて考えもしなかった。

ところが、2~3歳になったころには少し余裕が出てきて、子どものあまりのかわいさに「もうひとり、ほしくなっちゃうね」と私はもちろん夫までもが何度も口にした。4~5歳になったころには、それまで並行遊び(友達と遊んでいるようで、ただ並んで遊んでいるだけ)をしていた子どもが発達し、本当に友達と遊ぶことを楽しみ始めて、やっぱり弟か妹がいたほうがいいかもと迷った。最近ではキャンプに行ったときに、そこで出会った子たちとわいわい遊んだあと、兄弟姉妹のいる子は一緒にテントに戻っていくので「さみしい」と泣かれ、これには心が痛んだ。他人が言うことはどうでもいいけど、子どもや自分たちの気持ちは当たり前だけどとても大切。

でも、それでも私たちの選択はやはり変わらなかった。よく考えたうえで、私たちには私たちに合う生活があるし、無理をしても上手くいかないと思ったからだ。今でも(もうひとりいたらな~)ってたまに思うこともあるけれど、別に私の子どもではなくても子どもはみんなかわいいので、友達の子や近所の子たちをかわいがりたい。

だから、子どもにはちゃんと説明することにした。これが私と夫の選択だということを、何にでもメリットとデメリットがあることを。兄弟姉妹がいるメリットは、家でも一緒に遊べる、気が合うと楽しい、大人になっても様々な条件が合えば付き合い続けられることなどがある。一人っ子のメリットは、それだけひとりに目も手もお金もかけられること、割と身軽に出かけられること、私たちのどちらかに何かがあっても残りの一方が守りやすいことなど。何を選んでも大体はメリットもデメリットもある。これは本当に希望があってよいことだ。

そして、一人っ子のメリットを私たちは享受している。平日だって、ときには自転車を飛ばして美味しい店にご飯を食べに行ったり、ふらりと探検したり、本屋さんに行ったり。ちょくちょく遠出や旅行をしたり。一方で、いつも行く商店街で日常的に5歳と3歳の兄妹に混じったり、私の友達の子どもと一人っ子同盟を組んで、兄弟とはいえないまでも従兄弟のように付き合ったり。

結婚していなかったら「結婚しないの?」、子どもがいなければ「いつつくるの?」「早いほうがいいよ」などと言う人がいる。子どもができたらできたで「次の子はいつ?」などと聞く人がいる。大体は自他の境界線が曖昧で無神経だったり、自分の選択が最良だと信じていたりするんだろうけど、内心(おいおい子どもかよ)(自分にとっての最良が他人にも通用すると思うのはおかしいだろう)と思ってしまう。そして、一部には自分の選択(結婚でも出産でも何でも)を本当によかったとは思えなくて、無理に「よかった」「正解だ」と思いたいがために他人に押し付けている場合もあるだろう。こっちはつらい。いずれにしても、何をしてもしなくても、余計なことを言う人はいる。

私は少し図太いところがあるので、淡々と「このかわいい子がいるから十分」とか「ほしいなと思うこともあるけど、こんな事情があるから」などと率直に返答してきた。不愉快な言い方だったり関係性が薄いのに踏み込んできたりした場合は「個人的なことだから」と静かに威圧したりもした。それでもしつこくしてきた人は過去にいないけど、されたら真正面から怒るだろうな。でも、はっきり言えない心やさしい人もいるし、こういう他人の人生に土足で踏み込むようなことはなくなるといいなと思う。同じことをたくさんの人に言われたら、いちいち答えるのも面倒くさいし。