日々雑録

40歳、書籍編集者の日記です。

2017年いちばん驚いたこと

今日で2017年が終わる。今年いちばん驚いたことは何かというと、これはもう15年くらい働いた前の勤務先が倒産したこと以外ない。

5月後半のある日、少し遅れて会社に着くと社長と弁護士さんが倒産についての説明を始めていた。寝耳に水。何しろ、その日まで印税や原稿料や給与などの支払い遅れはなかったし、進行中の本が何冊もあったから(しかも急かされていた)。いまや中小版元は余裕があるところのほうが少ないだろうし、倒産はあり得ることだけど、そういう場合は何か月も前から支払いの遅れが出るとも聞いていたので、まさかだった。

会社はすぐ立ち入り禁止になると説明されたので、真っ先に資料をまとめた。大規模容量のUSBを後輩が買ってきてくれて、そこへ必要なデータをコピー。段ボール箱に資料を放り込んで自宅に宅配便で送った。それから著者や関係者に電話やメールをして、ご報告とお詫び。これが最もつらかったこと。幸運なことにやさしい人ばかりで、私のことを心配してくださって、それでも職を失ったことより申し訳なさで落ち込んだ。いつもノーテンキな私でも、こんなに落ち込むことがあるんだなと思った。

一方、編プロ部門の人たちは既に受けた仕事を放擲するわけにもいかないので、慌ててレンタルオフィスを借りようとしていた。総務の担当者は一人ずつにクリアファイルを渡してくれた。中を見ると、これからやるべきことのリスト、今年の途中までの源泉徴収票、書き込むところに付箋などをつけた退職金請求の書類、企業年金解約の書類、失業届の用紙などなど。「編集には全然わかんないだろうと思ってね」と用意してくれていて涙が出そうだった。そして、みんな丁寧に挨拶しあって解散。

ハローワークに行って失業届を出す

〇厚生年金を国民年金に切り替える

(倒産の場合は全額もしくは部分免除が適用になる場合もある)

企業年金の解約手続き

(いつまで存在するかわからないため解約)

国民健康保険に切り替える

〇税金を確認して払う

〇退職金を請求する

で、翌日から以上のような様々な手配をすると同時に、速やかに履歴書と職務経歴書を用意してエージェントに会い、さらにフリーで仕事をすることも検討した。大学卒業後はずっと働き続けてきたし(産休と僅かな育休を除く)、もしも特に予定がなかったら1年くらいはのんびり家事と子育てをして過ごしただろうと思うのだけど、出したい本があるし、待ってくださっている人がいたから。

再就職活動をしてみると、出版業界は思っていた以上に厳しいことに気づいた。年30冊のノルマのある版元も少なくない。それだけの冊数を担当するとなると、資料も読み込むのも難しいのではと思った。一方、WEB系(特に企業の一部門)は条件がよかった。でも、やはり書籍を作りたい。そして3か月が過ぎたころ、幸い「得意分野の書籍を作ったらいい」「定時帰宅でも大丈夫」と言ってくれた現在の勤務先に再就職することになった。

振り返ると、私が無職のとき、友人は飲みに誘ってくれたり、美味しいものをご馳走してくれたり、会社や人を紹介してくれたり。仕事関係の人は新しい仕事に誘ってくれたり、フリーの仕事について教えてくれたり。夫は「フリーでも会社員でもどちらでも大丈夫」「俺よりずっと優秀だから」などと言って元気づけてくれた。それから、ネット上で書店の方が私の担当本を「もっと売りたかった」と言ってくださったり。

そして、著者や関係者のみなさんは「一緒に仕事できてよかった」「気長に待ってます」「飲み会やりますよ」などと言ってくださったり、中には「印税はいらないから他で復刊してください。お任せします」とまで言ってくださった人もいた。とてもありがたかった。とりわけ、“待ってる”とか“また一緒に仕事したい”と言ってくださるのが、すごく嬉しかった(みなさん、ありがとうございました)。

勤務先の倒産なんか経験しないほうがいいのだけど、もともと知っていたことだけど、やさしい人がたくさんいることが改めてわかって、いいこともあったなと思う。あとは途中になっていた仕事、新しい仕事をきちんとやるだけ。

来年はよい本をだすぞ!!!(復刊もします!)